千樹万命小話
※この記事は TonevoAdventCalendar 2021 の24日目の記事②です。ぜひほかの記事もご覧ください。
皆様、こんにちは。
12月24日の記事その2を担当させていただきます、らふむ(lufm)と申します。普段は曲を作ったりしています。
早速ですが、先日公開されたとんえぼ創作班*1制作の非公式K-Shoot MANIA*2パッケージ「TonEvo Package vol.10 -Evolved 2021-」、あるいは今年のBOFXVIIというイベントに出場したチーム「とんえぼ創作班」の作品はもうプレイしていただけたでしょうか。
(どちらも力作揃いなので、未プレイの方はぜひ触ってみてください。ここ ↓ からダウンロードできます。)
今回私はこの2つに、「千樹万命を抱く翼よ」という楽曲で参加させていただきました。ジャンル:ミスコワ
ということで、本記事ではこの「千樹万命を抱く翼よ」についてちょっとだけ話したいと思います。
拙文ですが、お楽しみいただければ幸いです。
背景
ジャケットを見ると分かると思いますが、ドラゴンな曲を作りたかったんです。
いいですよねドラゴンって。人間など歯牙にもかけないその威容に惚れる。なりたいし抱かれたいし蹂躙されたい。
この曲を作っていたときは抱かれたい感情が一番大きかった&自然の擬獣化としてのドラゴンの印象が強かったので、3拍子系の雄大な曲を目指してみました。大自然です。
それとボス曲を作りたいというのも考えていました。なぜか作る曲がことごとく高難易度に指定されるので、いっそボス方面に振り切ってみようと奮起してみたんですが、譜面も含めて綺麗にまとまったので自分でもびっくりしています。後述するように(自分にしては珍しく)色々考えながら作っていたので、そのおかげでしょうか。
ちなみにメロディーについてはDAWを触っていたら冒頭部分が脳内に降ってきたので、「これで行けるんじゃ?」と思ってそのままノリ&手癖で作りました。そのためメロディーとコードはそこそこ短時間で完成したと記憶しています。
気にしたこと
ここからはこの曲を作りながら考えていたことを書きます。
文中のx:xx~は冒頭に掲載したSoundCloud上での位置を表しています。
まだ発展途上(?)の自分が考えていたことなので、曲作りの実力がある方からすれば「当たり前」と感じたり「そんな訳ない」と感じたりするような記述もあるかと思いますが、その時は温かい目でスッと読み飛ばしていただくようお願いします。
譜面を想像してみた
そこまで深く考えているわけではありませんが、
鍵盤寄りの複合→0:39~ Breakcore風味
細かい音を鍵盤で叩かせつつ、直角ツマミを回しそうなリズムも入れられる
ツマミ寄りの複合→0:52~ Brostep風味
グロウルベースに合わせてツマミを回せる
鍵盤全振り発狂→1:13~ 16分でピアノが鳴っている、よくあるやつ
本当によくあるやつ
といった譜面展開を思い浮かべて作っていました。K-Shoot MAINAに合わせて考えていたのですが、他のゲームだとまた変わってくるんでしょうか。
他には難易度が一箇所に偏らなさそうな展開にすることを意識しました。
譜面側にエフェクトがあるとはいえ、流石に(そういうコンセプトでもないのに)音数が少ない場所で無理やり難易度を上げるのは苦しい感じがすると思うんです。
音ゲー向けに曲を作る場合、難易度については譜面側に丸投げするのではなく、楽曲側でも難易度曲線を(ほんの少しでも)意識するようにし、少なくとも「この一箇所に比べて他の箇所の音数が少なすぎる」みたいな展開は避けたほうがまとまりやすいのではないでしょうか。どうなんでしょう偉い方。
動きの多い音色を絞ってみた
この曲では、16分音符など動きの激しい要素を、リズム隊とピアノに集中させています。
これまで何曲か作ってみたところ、どうやら自分はそれぞれの音色の役割がはっきりしている方が好きなようです。というわけで、動きが激しく難易度を上げる音色は一部に絞り、それ以外の音には長めの音からなるメロディーとコーラスをとにかく担当してもらうという構成を目指しています。
あと私は音の動きが大きくなるタイミングを音色ごとに被らないようにするのも好きなようです。今回の楽曲で言えばサビ(1:46~)のピアノが16分で動くフレーズでそれを行っており、具体的にはメロディーがちょうど動かなくなったタイミングに合いの手的に差し込んでいます。
……上手く言葉で説明できなかった感じがするので音源をどうぞ ↓
記憶に残したかった
自分は同じフレーズが形を変えて再登場するのが大好きなので、この曲も反復を意識して作っています。
具体的には、冒頭のメロディーを1:25~の静かなパートとその後のサビ、2:20~のアウトロと色々な場所に(形を変えながら)流用していたり、
1:13~の16分ピアノ発狂地帯のコードとメロディーを2:08~のラストの畳み掛けにそのまま持ってきていたりしています。
反復って基本的な技術の割に聴衆の記憶に残しやすいんですよね。本当に記憶に残せているかは分かりませんが……
前者はメインテーマに相当するメロディーですし、後者は個人的に最も気に入っているフレーズなので、この2つは記憶に残ってほしいなと思いながら作っていました。
ちなみに後者については明らかに難所になるであろうパートに持ってきていますが、これは譜面が難所ならメロディーも一緒に印象に残りやすいかなという思考に基づいています。
でも鍵盤を叩くのに集中してあまり曲を聴けないこともあったりするんでしょうか……?残念ながら作者である自分には(否が応でも曲を認識してしまうので)分かりません……。
思えば2019年の京音パッケージに提供させていただいた「もの麗らかな慈雨を求めて」でも似たようなことをしていましたね。使っている効果音といい、だいぶ流れを継いでいるかもしれません。
反省点
一方で反省点も色々とあります。今回はその中でも一番悔しかったものを紹介します。他の反省点については自分の中で消化することにします。
BMS化することを意識しすぎて、音の調整を怠った
最初にこの楽曲でBOFXVIIに参加したと書きましたが、このイベントでは作品フォーマットをBMS(楽曲で鳴っている音を1音ずつ別々の音声ファイルに分割し、指定したタイミングでその音声ファイルを鳴らすような形式)とする必要があります。そして、BMSでは実際に鳴らせる音声ファイルの種類(定義数)は限られています。
そのためBMS向けに曲を作るときは、音の強弱やフィルター操作といった音色の変化は音声ファイル数の増加に直結し、定義数不足を引き起こすことがあるので、安易に行うことはできません……
……と思って音色変化を過度に渋ったところ、定義数が3割(1295個中376個)も余ってしまいました。ピアノの強弱をもっと細かく変えたりしても十分足りたのではないでしょうか?
また次回BMSを作る機会があれば、そのときはもっと積極的に音をいじるようにします……。
おわりに
というわけで拙作「千樹万命を抱く翼よ」について書いてきました。
私はこれまでフィーリングで曲を作るのがほとんどだったのですが、今回の曲において色々考えながら作るという行為をしてみて、「あっこれ楽しいな」と感じました。その思考が最終的に上手く働いたのかどうかは分かりませんが、少なくとも試行錯誤の最中に感じていた興奮は心地よいものでした。
やはり、皆さんにも創作という文化を体験してみて欲しいなと思います。
残念ながら、創作を継続するのが簡単だとはどうしても言えません。モチベーションも、向き不向きもありますし、曲を作る場合はお金もかかりますからね。
しかし、試行錯誤を経ながら自分の手の中でこの世に存在しないものが新たに生み出されていくという経験は、何ものにも代えがたいものです。それに、自分が本当に創作に向いているのか否かというのは、実際に体験してみないとなかなか判断が難しいのではないかと思います。ちょっと体験してみて自分の適性を知るだけならタダなので、ぜひ創作に触れてみて欲しいと思います。
それでは私の記事(のメインの内容)はこのあたりで締めようかと思います。
稚拙な文章にもかかわらずここまで読んでくださりありがとうございました。まだまだ未熟さを感じるところも非常に多いので、少しずつ精進していこうと思います。これからもよろしくお願いします。
というわけでみなさん、「TonEvo Package vol.10 -Evolved 2021-」をダウンロードして
「白の勇者と始まりの龍」「黒の勇者と終わりの獣」「天」「Lemonadegrenade」「Reincarnation collapse」をやりましょう。*3
ではまた。
余談1
今回はジャケットも自作しました。そりゃドラゴンな曲を作ったからにはドラゴンな絵を付けたいですし、それに数ヶ月前に「次回のパッケージまでには絵を描けるようにしておきます」なんて言ったならやるしかないですよね。
もふもふどらごんです。ティアーヌちゃんといいます。BMS版のreadme.txtにこっそり書いてました。ちなみに地母神で、割とハグ魔です。こっちは書いてません。
この子、なんとK-Shoot MANIA上で動きます。
2日目のスコアアタックで1位だった犬吠埼さんに、エキシビションとして「千樹万命を抱く翼よ」のIN譜面を初見でプレイしていただきました! pic.twitter.com/VhdUYcSm3a
— 東北大学音ゲーサークル とんえぼ (@tohoku_otoge) 2021年11月6日
すごくないですか!?!?すごくないですか!!!?!?!?!??
やっぱり自分で描いた子が動いていると感慨深いものがありますね。
動かしてくださったのは、とんえぼパッケージにてK-Shoot MANIAの特殊背景*4を担当してきた山田太郎さんです。ありがたや……ありがたや…………
ところで、聞くところによると簡単に翼を描けるClip Studio素材なんてものがあるそうじゃないですか*5。
翼の素材!!??!?!?!???!?*6
ちょうどいい翼の資料を探すのにかなり苦労したんですよ……手書きしてもトレースしてもなかなかしっくり来ず……
そして翼に時間をかけすぎた*7結果、他のタスクとの兼ね合いで塗りをあまり詰められなかったんですよ……
この素材があれば塗りの方にももっと時間を割けたのかもしれません……
……これからは素材も漁るようにします。
余談2
ドラゴンつまみ。
「TonEvo Package vol.10 -Evolved 2021-」では譜面の方もいくつか制作させていただきました。
そのうちの1つで、本文最後に述べた5作のうちRyuElviaさんの「白の勇者と始まりの龍」という楽曲のIN譜面(最上位譜面)を担当させていただいたのですが、とても好きな楽曲なので、敬意を込めて上のドラゴンつまみを置かせていただきました。
最初は形だけの予定だったのですが、エフェクトの種類をBITC(ビットクラッシャー)にするとそれとなくドラゴンの咆哮っぽくなってびっくりしました。
みなさんもぜひプレイしてみてください。
*1:とんえぼ創作班の概要については、創作班の代表を経験したこともあるnearainさんが本アドカレ7日目にて紹介されています。自分は読みながらずっと「わかる……」と呟いていました。 → 創作は、いいぞ。 - TonevoAdventCalendar
*2:masaka氏制作のフリー音ゲーです。有志によるオリジナル楽曲・譜面が多く公開されています。なお読みは「けーしゅーまにあ」であり、「ケーシュート」ではありません。
*3:TonEvo Package vol.10 -Evolved 2021- 推し曲5選
*4:K-Shoot MANIAではプレイ中の背景も自作可能で、手間はかかりますが動きのある背景にすることもできます。
*5:本アドカレ10日目の記事で、とんえぼ屈指の凄腕絵師Chrocatz/くろねこさんが吟世かいなさんの「天」という楽曲のジャケットについて語っているのですが、その中で翼の素材について触れていました。もっと早く知りたかった。他の箇所も含め、今後色々と参考にさせていただこうかと思います。 → とんえぼパッケージにジャケットイラストを描いたので思っていることをまとめてみた - TonevoAdventCalendar
*6:別にゴママヨではないです、念の為
*7:資料探しが3割、資料を用意したにも関わらず「わかんねー」と嘆いている時間が6割でした